「できそこないのこどもたち Subject:247」SS

俺は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の博士を除かなければならぬと決意した。

博士は俺から彼女を奪った。
何度も愛し合った人である。彼女以上の人は俺にはいないと思った。
俺は彼女の感覚を思い出そうとする。
ある一定の期間より昔は、なぜか頭に靄がかかって思い出せないのだけれど――それでも、思い出せる限り克明に彼女を頭の中に描き出した。

太陽のような笑顔。華奢な指先。ハリのあるふっくらした肌。ぷるんとした唇。
その一つ一つが美の女神のようで、俺には彼女しかありえなかった。
さらに思い出す。
ぬるぬるとしたそこに俺が侵入していくと、彼女は甘い声をあげて目を細めた。貫くように体を押し込む。すると彼女は高い声で啼くのだ。それを聞いて俺は気を良くする。
――もっとこの声を聞きたい。
――苦悩した表情を見たい。
そうして彼女に溺れていくのである。ああ、こんなことを考えていたら、俺の欲望がたぎり始めてしまった。

俺は硬くなった俺自身に手を添えて、適度な力で擦り始めた。
想像するのはもちろん彼女のことだ。

会いたい。会いたい。会いたい。愛して欲しくてたまらない。
俺の先端からは涙のように雫があふれ出した。もしかしたらこれは本当に涙なのかもしれない。
俺から彼女を奪った博士への抗議か、はたまた彼女を愛おしく思う子供のような心か。
俺はその涙をも肉欲の塊に擦りつけて、気をやらんとしていた。彼女に会いたい気持ちなら、なんだって構わない。動かす手の速さを速く、強くしていく。

あ、あ、ああ。イキそうだ……。
呼吸するのもためらわれるほど、感覚が昂ぶっていく。そしてとうとう、俺は欲望をその場に吐き出した。

その後に襲ってきたのは、強い虚しさだ。
この行き場のない感情、延いてはこの液体そのものが、ただその場に吐き出されて終わりになってしまう。
もし彼女とともにこの場所にいて、彼女に俺の情熱をぶつけられたらどんなに良かっただろう。
熱が冷めてくると、彼女が今ここにいないという事実だけが俺を悲しくさせた。

次に彼女に会える日がくるとしたら、きっと彼女は俺のことを忘れている。
今回は「そっちの番」だ。俺が彼女を忘れさせられる、もしくは2人とも綺麗さっぱり忘れることもある。
それでも俺たちは何度も出会い、何度も恋に落ちるのだ。
それを運命と呼ばずしてなんと呼ぶ?

そう考えたら不思議と楽しくなって、俺は彼女との何度目かの新たな出会いが楽しみに思えてきた。

待ってて、「母さん」




End.
written by 虚羽あす